スターリングエンジンとは
現在,地球規模での「省エネルギ・環境汚染」が深刻な問題となっています。そのため、「人にやさしい・環境にやさしいエンジン」の開発が要求されています。この要求に答えられる動力源としてスターリングエンジンが注目されています。
1816年、スコットランドの牧師、ロバート・スターリングは当時、全盛であった蒸気機関に対抗して、新しい熱機関を発明しました。高圧の蒸気ボイラーが爆発する事故をしばしば引き起こしていた蒸気機関に対して、低圧空気を使うスターリングエンジンは爆発の危険性がないことで、注目を集め、たくさん生産されました。
このときはシリンダ内の気体に空気を使っていたので、熱空気エンジン「ホット エアー エンジン(hot air engine)」と呼ばれていました。
そんな中で、1876年 ドイツの技術者であるオットーが、ガス機関を発明し、1894年にはディーゼルエンジン等の大きな動力を得るのに適した内燃機関が発明されたことにより、スターリングエンジンはこれら内燃機関のエンジンに対抗できずに姿を消すことになってしまいました。
しかし、その後も、研究は続けられ、原理的に高い熱効率も実証されました。近年、省エネルギー、石油以外のエネルギー利用を目的とした研究の中で、スターリングエンジンの研究はさらに発展しました。
低温度差スターリングエンジンの開発の歴史はクロアチアのザグレフ大学のコリン教授が1983年に行ったデモンストレーションから始まりました。 パワーピストンの代わりにゴム製のダイヤフラム(薄い膜)を使用したこのモデルは、温度差100℃で力強く作動し、温度差が20℃になるまで動き続きました。
この画期的なデモンストレーションにより、スターリングエンジンの持つ可能性が多くの研究者に再認識され、その後も世界各国の研究者により、さらに低い温度差で動くスターリングエンジンの研究開発が進められていったのです。
未来のエンジンと言われるわけ
静かなエンジン
車やバイクのエンジンは爆発音のために騒音が発生します。そのため、消音マフラーや遮音材などの工夫をしていますが、完全に消すことは出来ません。スターリングエンジンは爆発音が発生しないので、きわめて静かです。
原理的に高効率
熱エネルギーの何%を仕事に変えられるか、という値が熱効率です。スターリングエンジンは爆発を行わずスムーズに気体を変化させるので、原理的に非常に熱効率の高いエンジンです。企業が実際に試作した際のデータでも、ディーゼルエンジン並みの熱効率がすでに得られています。
排気ガスがクリーン
ガソリンやディーゼルの内燃機関は燃料と空気を混ぜて、密室で爆発させるため、高温高圧下で様々な化合物が生じてしまい、窒素酸化物(NOx)をはじめ有害な成分が排気ガスに含まれてしまいます。スターリングエンジンでは、燃料を使う場合でも爆発によって発生する有害成分は出ません。静かに燃焼させクリーンな排ガスを得ることが可能です。
熱源を選ばない
スターリングエンジンは温度差を作り出せば動くので、バイオマスなどのあらゆる可燃物、地熱、太陽熱など、色々な熱源の利用が可能です。
また、設計によって数十度、あるいは数度の温度差でも動く低温度差型のエンジンを製作することが出来ます。温排水などの現在捨てられている熱を利用する方法の一つになります。